ディップメーター
ディップメーターと聞いて「古い測定器」だなと思われる人もあれば、「何それ」と疑問に思う人もあると思います。 ディップメーター は、第二次世界大戦の前ぐらいからある、コイルの共振周波数などを測定する「測定器」です。 内蔵した発振器を元に、未知なる共振回路の周波数をメーター の振れ(共振するとピクンと針が振れる)を見て計測する機器です。
コイルのインダクタンスや、コンデンサの容量なども計算で求めることができ、アマチュア無線家にとってテスターに次ぐ使い勝手のよい測 定器だったのです。しかし、今ではアンテナアナライザー、LCメーターなど計算や試行錯誤をしなくても手軽に測定できるようになりました。20年いや10 年程前まではメーカー製やキット商品もあり手ごろな物でした。
さて、そんな手軽で便利な測定器を今回改めて紹介してみようと思います。
TRIO DM-800
原理
原理は、簡単なもので内蔵のデバイス(真空管、トランジスタ)を使い、簡単なLC発振回路とその発振状態を示すメーターがついているだけです。もちろん、付加回路として、低周波発振器や周波数カウンター用のバッファなどがついている場合もありますが、基本はみな同じです。
いろいろな周波数を測定するために、「プラグイン・コイル」と呼ばれる差し込み式のコイルが何本か用意されていて、必要に応じて取り替えて使うと言う構成になっています。
機能
ディップメーターの機能には、
- 共振回路(同調回路)の測定
- アンテナの共振周波数の測定
- テストオシレーターとして使用
- 水晶発振器として使用
- 吸収型周波数計
- 電界強度計
- インダクタンス(L)とキャパシタンス(C)の測定
と1台で何役にも使えます。
共振回路、アンテナの共振周波数の測定
ディップメーターの一番の得意機能です。測定したい共振回路(コイルとコンデンサ)やアンテナに近付けてディップメーターを操作する と、共振しているところ(周波数)で、メーターがピクンと振れます。その時のダイヤルや周波数カウンターの周波数がその共振回路の周波数です。
テストオシレーター
ディップメーターは、LC発信回路ですから自分の希望する周波数で発振させることができます。 受信機の調整など、微弱な信号が必要な時は便利です。機種によっては、AF発振器を内蔵している物もありますから、AM受信機の調整にも使えます。
水晶発振器
プラグイン・コイルの代わりに水晶発振子をつけるとその水晶のチェックができます。もちろん、その周波数で発振していますから、「クリスタルマーカー」としても使えます。 ただ、発振回路に依存するような水晶の場合は若干周波数がずれることがあります。
吸収型周波数計、電界強度計
ディップメーターの電源を切った状態で、発振回路やアンテナをつけると信号を受信することができます。 この機能を使うことで、周波数を測定したり、電界の強度を見ることができます。
インダクタンス(L)とキャパシタンス(C)の測定
LC発振の式を利用して、LとCを計算することができます。
あらかじめ、インダクタンスかキャパシタンスが分かっていれば、それぞれの価を計算で求めることができます。
こんな便利な測定器なのに・・・
こうしてディップメーターを紹介していると、今でも使える測定器だと思います。 しかし、なぜ「お手軽」ではなくなってしまったのでしょうか? メーカー製がなくなったのも一因だと思います。 では、自作できない物でしょうか?
回路自体は簡単です。20年程前の無線の雑誌などに頻繁に製作記事が掲載されていました。なのに・・・、そうです。重要パーツが手に入 らなくなったのです。 それは、プラグン・コイル用のボビンがなくなったのです。 インターネットや少ない雑誌の作製記事を見るとみなさんこのコイルに苦 労されています。
そこで、1台私も作ってみることにしました。
もちろん、プラグイン・コイルの製作実験をかねてです。 回路は、オーソドックスなFET1石の発振回路、それに周波数を読み出すために周波数カウンター用のバッファ回路をつけます。
意外と簡単にできました。 回路の組み立てはもちろん「KQFピンポスト」を使いました。ちょっと実装密度を上げたのでキツキツという感じです。
さて、問題のプラグイン・コイルです。
いろいろ調べると、アクリルパイプ、ペンやマジックの軸などを使っているものが多い様です。しかし、ちょっと「お試し」というのではや りにくいと思いました。そこで、思い付いたのが「同軸の芯線」です。 手許には5C2Vの芯がたくさんあります。 ちょうどコネクターに使っているRCA プラグとサイズがあいます。早速何回か巻いて試してみました。
発振します。ただ低い周波数では巻数が多いので芯が細いと使いにくそうです。
次に考えたのは「紙」です、所詮実験ですから手近なものでするのがいいのです。官製はがき(年賀状)で1cm角の角柱を作ってみました。ダメでした。うまくコイルとして卷けません。もちろん、見てくれもそうですが、巻きにくかったです。
紙の角柱に巻いたもの(一番左)、5C2Vの芯線にビニルテープを巻いて径を太くしたもの(左から2本目)、5C2Vの芯線に巻いたもの(3本)
そして・・・RCAのネジ部分はだいたい9mmぐらいです、9mmだとこれまた手許に外径9mmのアルミパイプがあります、今度はこれを芯にしてはがきを巻き付けてみます。 幅5cm幅、長さ10cmで9mmパイプに巻き付けてパイプにしました。
紙と言っても、意外と丈夫でさすがパイプだと思いました、今回は細いワイヤーも太いワイヤーもスムーズに卷けます。
はがきで作ったプラグイン・コイル
見た目は、そこそこですが実用性は十分あると思います。
この状態で、ディップメーターの試作はほぼ完了だと考えました。はがきさえあれば、だれでも作れることが分かりました。
しかし、1本作り損ねたことに気が付きました、上の写真でも分かるように右端のものは少し青っぽいです、こ れは裏表を間違えて巻いてしまったのです。そうするとちょっとがっかりです。 これが「紙」の限界か・・・と思うと「どうにかしたい」と言う気持ち が・・・・インターネットを調べると、ベークライトで加工製品を作ってくれる会社を見つけました。 駄目もとで内径9mm、外径12mm、長さ55mmの パイプができないか問い合わせてみました。
びっくりです、「できますょ」との嬉しいお返事。早速注文。
届きました、さすがベークパイプ、年賀状とは違いすぎます。 早速コイルを巻いてみました。
どうですか?
紙ボビンとは若干巻数がかわりましたが、希望の周波数に卷けました。
調子に乗って、透明の収縮チューブを使ってコイル名と周波数を入れてみました。
一番左は、TRIO DM-800のもの
ベークライト・パイプつにいて
今回使用しましたベークライトのパイプのサイズは、内径9mm外径12mm長さ55mmで、RCAプラグにうまくささります。少し余分があったのですがパーツセットに使用したためなくなりました。